執筆者紹介:浦岡 翠(うらおか みどり)
専門は声楽・オペラ・合唱、子どもたちからは「みどり先生」と呼ばれています。
アノネ音楽教室では、オンライン校土曜日 集団音楽教室小学生ベーシックコース、同年中長コースの教室長、声楽の個人実技レッスン講師、各種イベントやコンサートでの合唱指導を務めています。花まる学習会でも教室長として集団授業を担当しています。
今回は、アノネ音楽教室で子どもたちと関わる中で、保護者の皆さま、そして子どもたちに伝えたい想いを『音楽への向き合い方~土台づくりから鍛錬の時期~』と題しまして、コラムを書かせていただきました。私の経験談も交えてお届けいたしますので、ぜひ中学生以上の子どもたちにも読んでもらえると嬉しいです。
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『音楽への向き合い方~土台づくりから鍛錬の時期~』
10月、今年も発表会の季節がやってきました。私の門下生も、発表会に向けて一生懸命に練習を重ねてきました。
声楽のレッスンの初めには、必ず発声練習を行います。ドレミファソファミレドの音に合わせて「ア~♪」と声を出しながら、ウォーミングアップをします。
今年からレッスンを始めた3年生のHちゃん。通い初めて半年が経ち、レッスンの空気感にも慣れてきたある日、「発声大喜利」が始まりました。音階が上がる度に声色を変えたり、変顔をしたり、「にゃー」と猫の鳴き声にしたり、ゆかいな変化をつけるようになりました。それに対して私が笑ったり、真似をしたりしてリアクションをとると、ケタケタと無邪気に笑うHちゃん。発声の時間に気持ちを解放させ、その後の曲の練習ではサッと切り替え、真剣な表情で歌っていました。
一般的に、レッスン=真面目な時間というイメージがあります。もちろんそういった時間の中で礼儀・作法を学び、真剣に取り組むことで力を伸ばしていけるので、非常に大切なことです。
しかし、私はアノネのレッスンだからこそ、その時間が音楽を通して「楽しい」を体感するときであってほしいと思っています。子どもたちにとってのレッスンが、レッスン=先生を笑わせる時間、歌う時間、楽しい時間というように、=の先がポジティブなことであふれるようにと、願いに近い気持ちを抱きながら子どもたちに向き合っています。そして、楽しく音を奏でている子どもたちを見られることに、この上ない幸せを感じています。
さて、ここまでは「音楽って楽しい!」という想いが、長く続けるための土台となる「小学校低学年期まで」のことについて書いてまいりました。ですが音楽に限らず、何かを習得するうえで大変になってくるのが、この後の年代です。アノネ音楽教室や花まる学習会では「鍛錬の時期」と表します。小学校低学年以降は、取り組む課題の難易度が学齢にあわせてどんどん上がってきます。そのうえ、思春期に突入して反抗的な態度もとるようになる子もいます。高学年以上になると、お家でご家族が付き添って練習をサポートする、なんてことも少なくなってくるのではないでしょうか。
かくいう私も、4歳からピアノを習っていましたが、特に高学年以降は母の前で練習したことはほとんどありませんでした。理由はあーだこーだと言われたくないから、です。例えば、「あ、ほら、またそこ間違った」「まだ暗譜してないの?」と、痛いところを突かれるものですから、母の前で練習することを避けていました。
それでは、高学年以降どのようにステップアップしていくのか。それは、人に言われて嫌なら自分で時間をつくり、自分自身で課題に向き合っていくしかない!そう、自主練です。
私が胸を張って自主練をしたと言える初めての経験は、中学3年生のときのことです。吹奏楽部で担当していた楽器・ユーフォニアムで、ソロコンクールに出ることになったのがきっかけでした。コンクールへの出場は、部活動外での活動だったため、部で決められた練習時間はコンクールの練習にあてられません。ですから朝早くに音楽室に行って練習し、夜は部活動が終わったあと一人残って練習をしていました。
来る日も来る日も、上手くなりたい一心で練習しました。ただ、金管楽器は長時間演奏し続けると、唇や口の筋肉が疲弊し、使い物にならなくなります。ですが、そこで練習を辞めるわけにはいきません。口の筋トレを日常生活のルーティンに取り入れたり、練習中のクールダウンの仕方を学んだり、長時間練習できる方法を会得していきました。これは歌も同じで、歌い続けて喉がへばってしまうようならまず発声がおかしいので、疲れない発声法に磨きをかけるようになります。そうすることで、長時間練習できる体ができ、練習時間が伸びると技術の向上にも繋がります。
「この1フレーズを上手く演奏できるようになりたい!」という気持ちで、その部分だけを30分も1時間も練習できるようになる頃には、練習は「させられるもの」から「するもの」になっていました。コンクールの結果としては、望んだ成果は得られませんでしたが、その後の部活動ではがんばりを評価してもらい、ソロパートを任されたり、上級生がいる中で金管楽器のリーダーに選ばれたり、と努力は無駄ではなかったことを自分自身に証明できました。
自主練とは、自分の体と音に向き合う時間。重要なのは、練習時間の長さではなく、中身の濃さです。とことん向き合ったことが自信になります。
とはいえ、がんばりはそう簡単には続きません。その燃える気持ちを支え続ける燃料が必要です。それが、「音楽って楽しい!」「音楽が好き!」という気持ちの土台と、花まるグループでいうところの感動体験です。
アノネ音楽教室に通う子どもたちは、「音楽って楽しい!」という実感の元、日々レッスンや練習に励まれていることと思います。今のその気持ちを伸び伸びと育んであげること。そして、音楽合宿や発表会、クリスマスコンサートなどのイベントを通じて、仲間とアンサンブルする喜び、みんなの演奏を聴いて受ける刺激、生のオーケストラの演奏への感動、こういった実体験を伴う感動の経験を積んでいくこと。そんな風に「がんばりの炎」を燃やし続け、その子なりの成長を遂げてほしいと思っています。
学生時代、何に注力したいかは人それぞれです。私(恐らくアノネの他の先生たちも)の場合は楽器の練習だったのですが、限られた時間を勉強にあてたい人もいる、スポーツにあてたい人もいる、それは自由です。それぞれの分野で、自分自身と向き合い、自分の最大限の力を伸ばせますように。今後もアノネの一員として、子どもたち一人ひとりの背中を見守り、サポートしてまいります。
アノネ音楽教室 浦岡 翠(うらおか みどり)- ”みどり先生”
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