執筆者紹介:山下 優(やました ゆう)
これまでに、ピアノ・作曲の個人実技レッスン講師、集団音楽教室『小学生ベーシックコース』『年中長コース』の講師、さらに花まる学習会でも教室長として集団授業を担当してきました。レッスンの現場だけでなく、アノネ音楽教室の開校当初より、教材開発からイベント運営など、裏方の仕事にも幅広く携わってきました。みんなからは「ゆう先生」の名で親しまれています。昨年、第一子を出産し、現在はレッスンの現場はお休みしつつ、アノネ音楽教室の運営を全般的に担当しています。「子どもたちが楽しく音楽に取り組むにはどうしたら良い?」と常に考えている、愉快で元気な先生です!
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『終着地点』
私には現在1歳3か月になる息子がいます。出産を機にレッスンの現場から離れ、現在は音楽教室の運営を担当しています。生徒たちに直接会う機会が減りさびしさを募らせていますが、音楽合宿やクリスマスコンサートなど、イベントごとに彼らと再会したり、新たな生徒に出会ったりできることが慰めになっています。レッスンの現場に復帰できるまでにはもう少し時間がかかってしまいそうですが、大切な生徒たちの成長を思い浮かべながら、裏方の仕事に徹することもまた幸せだなと実感しています。生徒たちがのびのびと楽しく音楽を学べる環境を整えていけるように、より一層努力してまいります。
実は、昨年の12月にもコラムを担当させていただきました。そのとき、我が子はまだ生まれて3か月で、コラムの内容は子育て奮闘記でした。そこから1年経ち、今でも毎日ドタバタと奮闘していますが、なんとか母親業に少し慣れてきたところです。そして、ついに息子も10月より音楽教室に通い始めました。アノネ音楽教室では0歳児クラスは開講していないので、別の音楽教室のリトミッククラスに通っています。ついに私も保護者の皆さまの仲間入りを果たしました......!
さて、音楽教室に通って、たどり着きたい終着地点はなんでしょうか。音楽教室に通う理由は、各ご家庭でさまざまだと思います。アノネ音楽教室の体験レッスンのときに、お申し込みいただいたきっかけを伺うと、「音楽が好きだから」「ピアノに憧れがあり、弾けるようになりたい」「情操教育の一環として」などの声を多くいただきます。音楽を通してお子さまの人生を豊かにすることがアノネ音楽教室の大きなテーマですから、お通いいただいている皆さまのご希望も、他の音楽教室とくらべると千差万別であるかもしれません。
高校2年生のAちゃんから9月に、「先生にたくさん伝えたいことがあります!」とメールをもらいました。Aちゃんは小学4年生のときから私がピアノのレッスンを担当し、ずいぶんと長い時間をともにしてきた生徒です。ピアノや勉強だけでなく、部活動のバレーボールにも力を入れている頑張り屋さんの彼女は、今年の初め悩みに悩んだ結果、「高校2年生は部活動に青春を捧げる!」と決意して、現在レッスンを休会中です。Aちゃんからのメールには、高校生活のエピソードがたくさん書かれていましたが、中でもバンドを組んだことについて語った文章は、ひときわ筆が乗っていました。選択制の授業で音楽を選び、Aちゃんはピアノを担当し、クラリネットと鉄琴を演奏するお友だちと一緒になったという内容でした。せっかくですから、メールを抜粋してご紹介します。
ピアノの譜読みは凄く辛くて、イライラして、なかなか進みませんでした。でも、一度決めたことをきちんとやろうと思い、決めたときから絶対に毎日ピアノを一回でも弾こうと頑張っています。
全部で5ページもある伴奏を弾くために、毎日行き帰りに曲を聞いて、家に帰ってきたら、伴奏の曲を聞きながら宿題をやってます(笑)
音楽を選択している子の中にはノリで入ってきた子もいれば、すごく上手な子もいて、自分との実力の差をすごく感じています。
それでも、4日目の昨日で1ページは譜読みを終わらせて、ゆっくり両手で弾けるようになりました!毎日しっかり30分〜1時間半練習して、日によって練習時間は違っても頑張って練習しています。
頑張って一曲弾けるようになったら、是非先生に聞いてもらいたいです。
てっきりバレーボール一色の生活かと思っていたAちゃんは、なんとピアノも一生懸命に取り組んでいたのです。しかも、高校の先生が教えてくれるわけではなく、ピアノのレッスンも休会中なため、自力で仕上げていっているということでした。とても嬉しい驚きでした。
そしてときは流れ、つい先日Aちゃんからバンドの発表の映像が送られてきました。そこには立派に演奏する彼女の姿がありました。Aちゃんはもともと素晴らしい表現力の持ち主ですが、その長所が遺憾なく発揮され、しっとりと切ない雰囲気で演奏していました。そして、お友だちをときに支え、ときにリードしていました。立派な演奏と相まって、Aちゃんはまた一段とお姉さんになったように見えました。私はすぐに感想を送り、彼女から返ってきた返事にまた胸を打たれました。
今回は、自分史上一番練習しました!100時間超えです!自分が伴奏ということで、絶対に崩れちゃいけないと思い、忙しい中でしたが練習を頑張り、理想的な演奏をすることができました!本番はやっぱり緊張して、手も足も震えたけど、準備してきたことができて良かったです!!
これから、自分は本格的に保育士を目指していこうと考えていて、是非大学に向けてもピアノを復活させたいなと思っています。
これからも頑張ります!!
小学生の頃はとっても可愛らしいAちゃんでしたが、いつの間にこんなに立派に成長したのかと感動して、何度も何度もメールを読み返しました。こんなに素晴らしいエピソードがある彼女も、最初から全てがうまくいっていたわけではありませんでした。練習習慣がつかなくて、毎週のようにお母さまと作戦会議をしたり、Aちゃんは思うように弾けずにイライラして葛藤したりと、それはそれは本当にたくさんの出来事がありました。Aちゃんとお母さまの努力の末、幾多の壁を乗り越えて今の彼女があることをお伝えしておきます。
アノネ音楽教室が設定している終着地点のひとつが、音楽教室を卒業したあとに先生がいなくとも音楽を一人で楽しんでいける力をつけることです。子どもの頃に楽器を習っていたけど、大人になったら忘れてしまって全然弾けないという話をよく耳にします。せっかく音楽教室に通うからには、その場限りの楽しさではなく、一生ものの力を授けてあげたいと考えています。幼少期から中・高・大学生くらいまで音楽教室に通いつづけると、その先長い人生ずっと楽器や音楽を深く楽しんでいけるだけの知識と技術を身につけられるのです。今回、Aちゃんがバンドを組んで自力で演奏していた姿を見て、私もひとつ講師としての役割を果たすことができたのかなと思いました(もちろんまだまだ教えてあげたいことはたくさんありますが)。
また、知識や技術だけでなく、音楽を通して人生に役立つ力を授けてあげたい、とも考えています。発表会などの本番に向けてコツコツ努力する粘り強さ、自分はどんな高い壁をも乗り越えていけるんだという自信、『本物』の美しさがわかる感性、音楽を愛する心など。これからの激動の時代を幸せに生き抜くために、子どもたちの力になれるように、少しでも多くのことを伝えたいと日々思っています。生徒自身の力を育むだけにはとどまりません。アノネ音楽教室ではかけがえのない音楽仲間に出会える機会をたくさん用意しています。そして、そんな仲間をぜひ見つけてほしいと願っています。
早いもので今年もあっという間に終わりを迎えました。新年のレッスンでは、アノネ音楽教室に通っている目的やたどり着きたい終着地点など、担当講師と改めてお話いただけますと嬉しく思います。来年もお子さまの力になれるように、アノネのスタッフ一同全力で努めてまいります。今年も一年お世話になり、誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。
アノネ音楽教室 山下 優(やました ゆう)- ”ゆう先生”
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